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人間禅での修行を実社会でどう生かしているのか。変化の激しい日々の暮らしの中で、どのように平穏な心を保つ精進を心掛けているのか。未熟ながら修行中の者が考えてみました。我々が日々学んでいる文献等については、「人間禅」のホームページをご参照ください。https://ningenzen.org
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スペイン風邪の教訓

スペイン風邪の教訓

房総支部 仲野嶢山

 

 新型コロナウイルス感染拡大で、想像もしたことがない耐久生活を強いられています。第三次世界大戦とも評され、先の大戦の実情を知らない人でも今の状況の異常性にほとほと嫌気がさしています。こうした新たにやってくるウイルス感染症は時として甚大な影響を世界中に起こします。経済的には1929年の世界恐慌以来のことと言われますが、医学的には今から100年ほど前に起こったスペイン風邪を思い起こさせるものです。その教訓を再度見つめ直し、今後に生かすためにスペイン風邪の被害について2020424日の朝日新聞「スペイン風邪に学ぶことは」という記事を参考に再度情報を整理してみます。

 スペイン風邪はインフルエンザウイルスA型の大流行で、1918年から1920年にかけて世界中で猛威を振るいました。数年前にも日本で新型インフルエンザウイルスA型が流行し、かなりの混乱が起きました。新型というだけで何か恐ろしいウイルスと恐れられましたが、実際には例年発症するインフルエンザと同程度ないしはやや軽いくらいの症状を起こすウイルスでした。当時鳥インフルエンザウイルスがかなり致死率の高い疾患として恐れられていましたが、それと同じくらい毒性が強いことを心配し、各地で新型インフルエンザの報道が出るとパニックになるような状況でした。でも、落ち着いてみると通常のインフルエンザワクチンも奏功し、抗インフルエンザ薬も十分に効果があり、例年のインフルエンザと変わりない対応で充分にコントロールできていました。それなのに感染初期に罹患した方は、周囲からかなりつらい仕打ちをされたような情報があります。

 今回も新型コロナウイルス感染が報道されると、種々の情報が錯綜して個人名やその所属先がネット上に暴露され、大きな人権侵害を引き起こしています。確かに現時点で新型コロナウイルスは恐ろしい印象が強いのですが、もう少し落ち着いて疾患概念が出そろうと、現在恐れられている状況とはかなり違うウイルスであることがわかってくると思います。

 スペイン風邪に話を戻します。スペイン風邪の際には当時の日本人の40%程度にあたる2400万人程度が感染し、死者が40万人に近かったようです。死亡率はおおよそ1.6%です。当時はかなりの死亡率と捉えられていましたが、特効薬やワクチンもなく、栄養状態も今よりかなり悪い時代で、ほとんど情報が入らなかった中で日本におけるこの数字は決して高くないと考えられます。今回の新型コロナウイルス感染は、スペイン風邪に比べれば現時点で23桁オーダーが小さい感染者数と思われます。ただ死亡率は現時点で0.72%と見積もられておりスペイン風邪と同程度です。

 スペイン風邪が流行した際には、当初運動会や遠足が中止になった程度ですが、その後小学校等の休校が相次いだようです。当時取られた対応法は、マスクの着用、うがいの励行、室内の換気、患者の隔離が主なもので、これは今回のコロナウイルスに対する呼びかけと全く同じで、今も100年前もあまり変わりがないようです。医療崩壊も当時問題になったようで、これも今と変わりがありません。当時と大きく異なるのは情報の量、人間の栄養状態、重症者に対する治療法と思われます。そのおかげで情報を入手し対応も取りやすいですし、生死の間をさまようような重症化例でも回復することが多いようです。一方で情報が独り歩きして過度な恐怖心や思わぬデマが広がるもとにもなっているようです。

 スペイン風邪が終息に向かったのは3年経過してからのようです。これは世界中で感染が蔓延に、人口の60%程度がインフルエンザに対する抗体を獲得するのにかかった時間と思われます。結局ワクチンはできなかったようです。新型コロナウイルスに効果のあるワクチン開発が進められています。国会答弁等では1年から1年半でワクチンができることを期待しているようです。そうなることを願いますが、過去の事例を見ると最も早くできたウイルスワクチンでも、臨床で使われるようになるには4年間を要しました。今回その期間を大幅に短縮した時間でワクチンが世に出ることを期待するばかりです。

 簡単に収束する気配のない新型コロナウイルスですので、今後どのタイミングで皆が集まって摂心会や参禅会を安全に開催できるのかわかりません。今まで通りの形態での開催は困難なこともありそうです。知恵を出し合ってこうした中での安全な座禅会の開催を模索していかねばなりません。

 53日に報告された東京荻窪支部の参禅会では、老師も学人もマスクを着用し、2m以上離れて参禅が実施されたとのことです。室内の音声が漏れないようにできるなら、参禅時に隠寮の窓を2か所以上開けておくことも必要でしょう。今回の東京荻窪支部では、食事も懇親会も宿泊もなしとのことでしたので、まずは短期間での参禅会から始めていくしかないようです。とてもお元気とはいえ80歳を超えた名誉総裁老師の参禅の際には、学人との間にビニールカーテンを設ける必要があるかもしれません。喘息の御加減が思わしくない際には参禅を中止にするくらいの心配りが必要かと思われます。

 実は私は5月中旬に千葉市医師会の活動でドライブスルーのコロナウイルスPCR検査を担当することになっております。およそ可能な限りの感染予防対策をした上で検査に当たりますが、それでも感染のリスクがゼロではありません。今も房総道場の日曜座禅会への参加を控えていますが、PCR検査担当後2週間は老師のお傍近くに寄ることは控えようと決めています。

 もう一度普段できる感染予防対策の基本を見直してしっかり励行しましょう。今年は3月から4月に流行しやすいインフルエンザやアデノウイルス感染が極めて少ないようです。これは疎かになりやすい感染予防対策を今年は皆がしっかりやっているので、コロナウイルス以外のウイルス感染症の発症率が激減していると考えられています。外出から戻ったら石鹸で30秒以上かけてしっかり手を洗い、うがい、鼻洗い、洗顔をしましょう。規則正しい生活をし、栄養、睡眠を充分に取りましょう。まめに水分を補給し、適度な運動を続けましょう。摂心会や参禅会がない生活が少なくともあと一ヶ月続きます。こんな時だからこそ24時間を使いこなす主人公となって、一日一日を有意義に大切に使っていきたいものです。(房総支部)

posted by ただいま禅の修行中 | 18:23 | 千葉・房総 座禅道場(房総禅道場) | comments(1) | - |
コメント
こういう意見は、所属ではなく本名を出すべきでは無いでしょうか?
摂心会ではなく、参禅会からリスクを減らしてやり出すことは良いことです。正しく恐れると云うことを前提に、人間形成の法の挙揚は断固として実施して行く気持ちも大切だと考えます。合掌 春潭 拝
2020/05/05 13:36 by 雄浄 丸川
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